植物が元々持っている成分を最大限に活かすことで、自然の摂理に従った五官に心地よいスキンケアをコンセプトとする「KENZOKI」を表現するためのインスタレーション。
植物が本来もっている「吸水と蒸散による加湿」「昆虫の誘引物質としての芳香」「光合成による空気清浄」といった特性は、個々に見ると微量であるものの、群生することで「なんとなく心地よい」環境をつくる。この曖昧な環境は電気式の空気清浄機や加湿器では生み出せないものであるため、植物をモチーフにした複数のプロダクトをデザインすることに。それぞれのプロダクトを植物が生成されるルールに従ってデザインし、植物のような微弱な機能を担わせ、それらを群生させることで、空間全体がひとつのプロダクトとなり、心地よい環境となることを目指した。
KENZOKIの商品はsteamed rice(米)、white lotus(蓮)、bamboo leaf(竹)、ginger flower(生姜)という4つの香りで分類されていることから、それぞれの香りを発散するプロダクトをデザインし、ギャラリー内が緩やかに香りでゾーニングされることを考えた。
KI-BL・・・樹木の枝や根が生える角度や位置の規則性でつくられたbamboo leafが香る花は、ギャラリー内の僅かな風に反応して動く形状に。
KI-WL・・・white lotusの香りは、葉脈を構成するルールで作られた綿毛のような形状がゆらゆらと動くことで芳香する。また、つぼみや若葉、枯れ落ちた花弁など、植物には当たり前の「時間経過に伴う変化」も意識し、粉体造形機の限界を超えた太さで造形することで意図的に「朽ち果てた」表情を持たせた。
KI-RS・・・気泡やイソギンチャクの形状の基となるボロノイ領域で作られた枝の先には、steamed riceが香る果実がなる。
KI-GL・・・左巻きに137.5度ずつ角度を変えながら葉を生やすことで、効率よく太陽光を浴びる特性をデザインしたプロダクトは、一枚一枚の葉の中央部分に手で削られた窪みがあり、まるで小さなスプーンのようにginger flowerの液体を受けとめる。
KI-AI・・・光触媒加工が施されたツタはレーザーカットによって作られ、その形状はタケニグサや雪の結晶などに見られるコッホ曲線から導かれている。ギャラリー内の光が多い場所に分布することで、緩やかに空気を浄化する。
KI-HU・・・工業用フィルターや液体電気蚊とり機の芯材などに使用される多孔質樹脂で作られたプロダクトは、花弁の枚数のルールであるフィボナッチ数列に基づいたヒダを持つことで、表面積が増し蒸散が促進され、まるで花のように水を吸い上げて加湿する。