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1872年に創業したデンマークの老舗家具ブランド Fritz Hansen社のためにデザインした木製のチェア。

Fritz Hansen社は、プライウッドを用いた非常に高い成形技術と、それによって生まれる座り心地の良さの
ノウハウを多数保有しており、アリンコチェアやセブンチェアといった歴代のチェアもこの技術を
使用したものが多い。そこで、このチェアもまた、9層の合板を使い、
シェル部分に特徴を持ったデザインとすることにした。

本来であれば、最も力が加わるフレームとシェルの接合部に肉厚が必要となり、
それによって重厚感が出てしまうが、逆に接合部を出来る限り少なく接しているように見せた
ディテールによって軽やかな印象にしたいと考えた。

背もたれとフレームの接合部には、シェルを滑り込ませるための溝を掘り、フレーム同士で挟んで
固定することで、まるで両端を洗濯バサミで留めた一枚の布が風をはらんでいるかのような
軽快な表情を持ちながら、十分な強度を確保できるようになった。さらに、座面も脚とは直接触れて
いないように見せることで座面がふわりと浮遊しているような佇まいとなった。

また、座面の両サイドを緩やかに立ち上げることで、体を包み込むような座り心地を実現すると共に、
同社を代表するスワンチェアやエッグチェアの面影を残すことも忘れなかった。
アームは通常よりも短く設計し、肘を充分に支えながらも、テーブルにチェアを寄せた際に
当たらないように心がけ、また、それによって背もたれの印象を強調することができた。

最終的に、23の木製パーツが職人の手によって、まるでパズルのように組み上げられることにより、
継ぎ目にネジなどが露出しないシンプルな表情を生まれた。それはヤコブセンのグランプリチェア以来、
61年ぶりに誕生した、同社の伝統と歴史を感じさせる木製の椅子となった。

Client:
Fritz Hansen
Collaborator:
Steve Oh
Photographer:
Yoneo Kawabe
2018.04