第一昭福丸

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  • 2020.04
for 臼福本店

宮城県・気仙沼の臼福本店が操業する遠洋マグロはえ縄漁船「第一昭福丸」の内外装デザイン。総重量は486トンで乗組員は23名。メバチマグロやクロマグロなどを漁獲するために、約10ヵ月間の重労働を伴った洋上での生活をおくることから乗組員の心身ストレスは大きく、一般的に若手の離職率は5割を超えると言われている。そこで、このストレスを少しでも軽減しつつ、若手が憧れをもつような漁船のデザインが求められた。

外装デザインは、船が本来もつ美しいフォルムを活かしたいと考え、直線的なパターンを施して船体の曲面を強調することに。「チガイヤマ・ホシ・イチ」と呼ばれる臼福の屋号を一度分解し、それとなく「和」を感じさせるグラフィックパターンへと再構成した。この柄は、内外装の印象を統一させるために船内の床材など、様々な形で活用している。
インテリアもまた、「直線」を利用したデザインに。これは人が本来長期間洋上で生活をすることに慣れていないことから、「陸上」での生活を感じさせるビルや窓、扉、そしてスマートフォンやテレビの画面など、多くの直線に囲まれた環境を想起させることが安心感に繋がるのではないか、という仮定から生まれたものであった。
安全性の確保のために必要な曲面は維持しつつ、できるだけストライプ状の目地や直線的な開口部が用いられ、ライティングもまたライン状でありながらも落ち着きや安心感を与えるような間接光が使用された。
このとき、もうひとつポイントとなったのが「不均質さ」をどう生み出すかであった。病院のインテリアなどに見られるように、機能性に特化した環境は均質な空間となりがちで、それが心理的なストレスを与えることがある。そこで、先ほどのパターンやストライプ、そして素材などを適度にランダムに配置することで場所ごとに特徴が生まれ、乗組員を飽きさせないことを考えた。
最後にデザインのアクセントとなったのが「重量感」であった。これもまた、常に浮遊状態であることを少しでも忘れられるように、テーブルの天板を通常より厚めにしたり、スツールを切り株のような形状にしたりと、地面にどしりと根付いているような、量感のある家具デザインとした。

このように「直線」「不均質」「重量感」という3つのキーワードに通じて、「陸上がもつ安心感」を取り入れたデザインを目指した。最後に、国内のマグロ船では初となるWi-Fi設備の完備や、従来より船内の天井を高くし、寝台など一人あたりの占有面積を拡大。さらに、マグロを魚倉にスムーズに移動できるスロープの設置など、様々な機能上の改善も講じられており、少しでも乗組員の身体的そして心理的な負担を軽減することに配慮したデザインとなった。


Collaborator : 乃村工藝社(interior), hnm
Photographer : Akihiro Yoshida(2-5), Takumi Ota(6-28)