sunafuki

中国では薬と考えられていた茶が日本に伝わり
その保存用に薬籠塗師が密閉性の高い筒形の茶器を製作した。
その後、棗(なつめ)の実の形をしたこの塗茶器が「棗」として伝わる。 
透けるほどに薄く挽き上げた木地に焼き土などを漆と混ぜて塗り重ねてから、 
砥石で研ぐ工程を繰り返す棗の製作工程。
一般的には、この上に上塗をして蒔絵や漆絵を施していくが、
「千家十職」の塗師である中村家十三代の中村宗哲氏と制作した4種類の棗では
何かを「足す」のではなく「引く」ことによって意匠を表現したいと考えた。

そこで、レーザーカッターで伝統的な文様を切り出したシートによりマスキングし、
高圧で金属の粒子を吹き付ける工業用技術「サンドブラスト」によって表面に削り加工を施すことに。
4つの棗は、それぞれ「桜文」「青海波」「紅葉」「雪花文」の文様で四季を表現。
普段は見ることのできない下地を部分的に削り出して、複雑な製作工程とその魅力を感じてもらうと同時に、
春〜冬にかけて徐々に削る深さを浅くしていくことで時間がうつろいゆく様も表そうと試みた。

春(桜文)の削りは最も深く、桜の木を使用した「木地」まで達している。
夏(青海波)は「錆下地」と「黒漆の中塗」のグラデーションに。
秋(紅葉)は「朱漆の中塗」と「黒漆の上塗」のグラデーションになるように削っている。
冬(雪花文)は、「黒漆の上塗」の表面を僅かに削ったマットな仕上げとした。

このように、サンドブラスト技術を用いて表現していることから、「砂吹(すなふき)」と名付けた。

Collaborator:
Yuto Suzuki
Photographer:
Akihiro Yoshida(1-21, 30-34)
Hiroshi Iwasaki(22-29)