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滑るような軽い書き心地がボールペン市場の主流となっている中、細かい文字などを筆記する際は
「長い直線」を引くよりも、「着地する」「止める」「曲げる」といった動作が多いことに着目。
つまり、現在の市場が実際のニーズにマッチしていないのではないかと仮定し、
直線に強い「スポーツカー」のようなペンではなく、足回りが良く、キビキビとした動きができる、
「コンパクトカー」のような新たなボールペンをデザインしたプロジェクト。

まずは、コーナリングを安定させるために、ペン先付近に真鍮製のオモリを配置し、
重心を一般的なボールペンよりも低めに。筆記中にペン本体が遠心力によって振り回される量を
大幅に抑制すると同時に、紙に吸い付くような書き心地も実現した。

次に、内部の密着度を高めることで、筆記中の「遊び」や「ぐらつき」をなくした。ブレーキ時や
コーナリング時に発生するノイズを取り除くために、ボールペン本体と芯の隙間を無くすパーツを追加。

また、芯の出し入れを行うための内部のバネをノック部にも追加し、サスペンションのような働きによって
ノック部のガタつきを緩和し、書いている最中のカチャカチャしたノイズを抑えた。
さらに、濃くなめらかなエマルジョンインクを採用しつつ、専用に開発された芯は従来品よりも
0.4 mm 太くすることで、振動の原因となる「しなり」を軽減した。

最後に、この内部機構にふさわしい外観として、しっかりと握りやすく、長時間使用しても
疲れにくいふっくらとした太めの本体形状に。このとき、筆記時にバランスが崩れないよう、
クリップ部が本体からできるだけ飛び出さないように配慮した。
また、ノック時の指の負担を軽減するフラットなノック部には、まるで製図用の筆記具のように
インクの色や太さなどの情報を配置することで、ペン立てに入れた状態でもすぐに判別できるようになった。
販売価格は150円(税抜き)で、ボール径は0.5mmと0.7mmの2種類と、黒、赤、青の3色が用意されている。

Client:
ZEBRA
Collaborator:
Shun Naruse (product)
Naoko Nishizumi (graphic)
Photographer:
Akihiro Yoshida
2018.12