docomo shop + d garden

国内最大の移動体通信事業者であるNTTドコモの販売店「ドコモショップ」の
新デザインの実証実験プロジェクト。

スマホの普及率の高まりに伴い、ビジネスモデルが「スマホ端末の販売や新規契約者を増やすこと」から
「今持っているスマホをどう快適に使いこなし、利用頻度を高めてもらうか」にシフトしつつある。
また、各種手続きのオンライン化が進んでいるほか、来店予約制も導入され、各店舗では端末販売エリアや
待合スペース、手続きカウンターなどの最適な広さを再検討するタイミングを迎えつつあった。

こうした大きなサービス形態の変化にあわせ、店舗空間の一部をスマホ教室や新規コンテンツのトライアル、
アフターサポートといったコミュニケーションや体験に重点を置いた空間に置き換えることになった。
それに伴って2タイプの店舗を開発。「ドコモユーザー中心の店舗」と「他キャリアユーザーも含めた、
みんなに開かれた店舗」という整理の仕方で新たなビジネスモデルに対応することを狙った。

まず、これまでの店舗をアップデートした「ドコモショップ」は、基本機能を向上させながら、
新たにコミュニケーション・体験型のコンテンツを導入。落ち着いた「静的」な空間とするため、
インテリアにはダークウッドとウォームグレー、従来のイメージカラーである「赤」系を配色するとともに、
暖色の照明を採用している。

一方、他キャリアユーザーも含めた、より多くの人々に開かれた店舗である「d garden」は、
コミュニケーション・体験型のコンテンツに特化した空間の中に、ショップ・イン・ショップのように
ドコモショップの機能を内包させた。利用者をドコモユーザーに限定せず、
「スマホについての相談があればとりあえず行ってみる」と思ってもらえるように、
店舗名から「docomo」を外して「d」のみに。モノを販売する目的でないことから「shop」も外し、
「公園」のように誰にでも開かれた場所をイメージして「garden」とした。

そして、赤の補色であり、公園を想起させる「グリーン」をグラフィック要素に使用。
明るくて「動的」な空間を目指してナチュラルな木質と柔らかな差し色4色を掛け合わせたほか、
自然光に近い色味の照明計画を採用した。

ポスターやPOPなどの掲出物はデジタルサイネージ化し、店内の視覚的ノイズを軽減しつつ、
貼り替えの手間をなくしている。

接客スタイルではタブレット端末を使用することで、従来のカウンター方式のみでなく、
ラウンジやカフェスタイルなどで多様なコミュニケーションが可能になった。

店内のBGMは音楽プロデューサーの亀田誠治氏が作曲。天気(晴れ、雨、風、曇り、雪など)や
時間帯をイメージして作られた心地よいオリジナルBGMで空間を演出する。

従業員に対しても、まずロッカーや休憩エリア、収納など、バックヤードの快適性と機能性を向上。
繁忙時と閑散時の波の大きい店舗では、接客用の個室としても、スタッフの執務スペースとしても柔軟に
使える「ハイブリッドスペース」を用意。限られたスペースの効率化を考えた。

両店舗のグラフィックツールやインテリアに使用するパターンは「docomo」のそれぞれの文字を
モチーフに開発。この色違いの共通パターンによってドコモブランドとしての連動感を持たせることに。

制服も来店者の緊張感が緩和されることを期待し、カジュアルでリラックス感のあるものにした。
女性のみに貸与されていたユニフォームを男女問わず揃え、ジャケットスタイルだけではなく、
Tシャツやカーディガン、マタニティやパンツスタイルなどの選択肢から自由なコーディネートが
できるようにした。高い伸縮性があり動きやすいだけでなく、シワになりにくく、乾きやすいといった
メンテナンス性の高い素材を選定することで、従業員の働きやすさにも配慮。
さらに、パンプスをスニーカーに変更することで、足の疲労軽減も図っている。

尚、新デザインを展開していくにあたり、いくつかの仮説に基づいたプロトタイプ店舗で様々な検証を行った。

ds-prototype 01
基本機能を重視した標準型中規模店舗

ds-prototype 02
アイランド型カウンターによって限られたスペースの有効活用を検証する都心型狭小店舗

dg-prototype 01

都心型大型店舗は、腰高の壁によって各コンテンツを囲い、適度な独立性と店舗内の視線の抜けを
意識。5G体験コーナー、IoT家電のトライアル、ポップアップコーナー、スマホ教室、シェアバイクなどの
実装と可変性の検証が行われた。
d gardenエリアとドコモショップエリアの区分を明確にしつつ、中間にカフェカウンターを兼ねた
接客カウンターを設置することで、限られた従業員数でも複数のタスクを実行することが可能になり、
それと同時に、入り口付近に従業員が常に立っていないことによって来店者の心理的障壁を減らしている。

dg-prototype 02
大型ロードサイド店舗は、天板の高さを900mmに揃えた円形テーブルを8台配置。
スマホ教室をはじめとする各種教育ワークショップやセミナーに重点を置いた。
円形テーブルによって、従業員や来客者が立ち止まってお互いに話しかけやすくなり、
多人数の教室開催時にはテーブルを囲うことで一体感と賑わいが生まれた。
また、一部床上げすることで、同じ目線で子供用教室のスペースも確保している。

dg-prototype 03
中型ロードサイド店舗は、洗車などモビリティーに関わる新サービスを提供。
在宅訪問サービスに使う電動自動車用の「ガレージ」も兼ねたインテリアデザインとした。

dg-prototype 04
複数階分離型店舗は、2階建タイプの実証実験として、目的を持って来店するドコモショップエリアは
2階に用意し、1階は開放的なd gardenエリアという具合に、完全分離した構成にした。
5GやAR技術を使ったイベント性の高いライブ、ゲームやスポーツの観戦が体感できる階段型ベンチが特徴。

dg-prototype 05
商業施設内店舗は、キッズを中心とした家族3世代で過ごせる店舗。曲線状のテーブルやベンチを使い、
子供たちの様子を、親が周囲から「見守り」ながらくつろげる構成に。各コーナーを分離させすぎず、
有機的に繋がりを持たせたデザイン。あえてd gardenエリアとドコモショップエリアの区分を
しないことによる影響を検証した。

dg-prototype 06
大型ロードサイド店舗は、地元のコーヒーショップと提携し、本格的な飲食サービスを通じた
コミュニケーション性に軸足を置いた。ドッグランやキッズコーナーなど、
ファミリー層を意識したデザインに。これまで検証してきたタイルカーペットや塩ビタイルではなく、
塩ビタイルに木目調のパターンをプリントし、その視覚的効果とメンテナンス性も検証した。

dg-prototype 07
駅ビル内店舗は、通行量の多い駅ビル内という立地条件のシミュレーション店舗。
d gardenエリアを手前に配した従来の実験店舗と異なって、奥に配置し、デスクや集中ブース、
会議室などの「コワーキング機能」を持たせたデザイン。
繰り返し利用してもらえるコンテンツによる影響を検証した。

Client:
docomo
Collaborator:
onndo
mado (interior)
Shinichiro Umehana(furniture)
Midori Kakiuchi(graphic)
Madoka Takeuchi(graphic)
Tsuyoshi Susa(graphic)
Photographer:
Takumi Ota
Akihiro Yoshida
2021.03