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タバコ市場が加熱式電子タバコへと急速に移行する中、電子タバコに関心が薄かったり抵抗感を持つ層に
アプローチをするための「第3のタバコ」となりうる、新たな可能性を模索する先行開発プロジェクト。

電子タバコへの移行によって失われつつあるタバコの魅力と、電子タバコによって得られたメリットを
併せ持った、電子タバコ用カプセルを火で炙って楽しむスタイルをデザイン。

本体は、カプセルの着脱が簡単なノック式。箱からタバコを一本取り出し、ライターで火をつけるという
一連の所作による心地よさを、「ノックする」ことに置き換え、気持ちのスイッチを切り替える
新たな行為となる可能性に期待した。

上部のボタンをノックするだけでタバコカプセルが装着され、そのまま先端をライターで10秒程度炙ることで
喫煙可能となる。再度ノックすることでカプセルが排出され、加熱したカプセルに直接触れる必要がなく、
火傷したり手が汚れたりする心配もない。

電気ではなく火で加熱することから、香ばしい風味で味わい深くなり、炎を眺めることで生まれる
リラックス効果も維持することができた。そのうえ、喫煙までの加熱速度も速く、既存の電子タバコの
加熱待機時間が約20~40秒のところ、約5~10秒で喫煙可能となる。
味わいは炙る時間で変化し、さらに豊富なフレーバーのカプセルの中から
気分に合わせてバリエーションを楽しめる。

電子タバコ特有の、タバコ葉を燃焼させずに加熱する仕様によって体への負担は減り、
煙や灰で周囲に迷惑を掛けることもない。一方では、充電が不要になるため重たいバッテリーがなくなり、
シンプルな機構のためメンテナンス性が高い。見た目はコンパクトで、軽量になり、
持ち運び時の快適性はもとより、喫煙時の佇まいも従来のタバコと比べても違和感が少ない。

ライターの貸し借りや、灰皿を囲むときの距離感から生まれる交流など、喫煙所という区切られた
空間だからこそ生じるコミュニケーションを誘発することは、ライターを使用することを踏襲したことで
可能となった。さらには、カプセルが露出したデザインにすることで、喫煙時に使用している
フレーバーが見えるため、ライターに加え、カプセルの貸し借りという新たなコミュニケーションも期待できる。

デスクなどに置かれているときや持ち運ぶときを配慮し、複数のカプセルと一緒に持ち運べる
レザーケースや、ライター、使い終えたカプセルを捨てるための容器を兼ねたスタンドなどの
アクセサリーも合わせてデザイン。

火を使うことで完結するデザインであることから「en(炎)」という名前をつけた。

Client:
JT
Collaborator:
Shun Naruse
Yuta Umezawa
Photographer:
Akihiro Yoshida
2018.03