

EXPO 2025 大阪・関西万博 日本館
人間だけではなく、すべての動物や植物、そしてあらゆるモノは、ひとつの役目を終える瞬間に何かが受け継がれ、
カタチを変えながら新たな役目を獲得する、というつながりの中に存在する。
そのような「いのちといのちのあいだ」に目を向けてみると、
この世界は無数の「小さな循環」によって成り立っていることに気づく。
これからの豊かさとは、すべてのいのちに敬意を払いながらその意味や価値を見つめ、
大きなつながりの一部となることで生まれるのかもしれない。
そしてそれは、この国に息づいてきた自然観や美意識に他ならない。
はじまりもおわりも存在しない、そんな「ひとつの大きな循環」が体感できるパビリオン。

Architecture
建築
円環状の構造体によって、いのちのリレーを体現する日本館。 最大の特徴は、円を描くように立ち並ぶ無数の「木の板」。 主にCLT(直交集成板)で構成されており、万博終了後に日本各地で建物としてリユースされることを前提に、 解体や転用がしやすいよう工夫されている。 その隙間からは内部を垣間見ることができ、中と外、展示と建築の連続によって、日本館のテーマにもある「あいだ」を来場者が意識するきっかけとなる。
Experience
展示体験
「ごみを食べる日本館」。その正体は、バイオガスプラント。 万博会場で出たごみが、微生物のはたらきで分解され、水や電気など様々なエネルギーへと再生される。 その過程をインスタレーションで追体験しながら、プラントで生み出されたエネルギーが日本館を動かすさまを体感する「生きたパビリオン」。 3つのゾーンで構成される館内を一周することで、日本の美意識である「循環」の意義を理解し、 自分自身も、壮大な物語の一部であることを感じられる。 循環は、はじまりも終わりも存在しない永遠のつながり。 3つある出入口のどこから入り、どこから出るかによって、異なる物語を味わうことができる。
Visual Communication
ビジュアルコミュニケーション
ビジュアルシステムもひとつの「いのち」である。 アメーバのように分裂と融合を繰り返しながら増殖し、呼吸し、成⻑するかのように、絶えずその姿を変え続ける。 この柔らかな「かたち」は、時にアイコンへ、時にイラストへと変化しながら、コンテンツの隅々へ浸透していく。 また、サインやサイネージとして館内の至る所に現れ、その場に応じて多彩な表情を見せる。
Collaboration
コラボレーション
日本館をナビゲートするのは、3体のキャラクター。 プラントエリアには、BE@RBRICKが登場。様々なものとコラボレーションし、「ラッピング」されるのが特徴。 目に見えない「CO2」「熱」「電気」といった要素を演じてもらう。 ファームエリアには、ハローキティ。ここでは32種類の「藻類の多様性」を表現する。 そしてファクトリーエリアには、ドラえもん。 ポケットから「ひみつ道具」を出すように、多様なプロダクトや仕組みを紹介する役割。 「あえて丈夫に作らない日本のモノづくり」を伝える。
Goods
グッズ
日本館に登場する、3体のキャラクター。BE@RBRICK、ハローキティ、そしてドラえもん。 彼らをかたどった、オリジナルのソフビフィギュアをはじめ、日本館のビジュアルが入った多彩なグッズを全てデザイン監修。 また、ファクトリーエリアの「やわらかく作る」というテーマを反映し、 一部パッケージには簡単な動作で畳める構造を開発し、資源ごみとして捨てやすくした。 こうしたグッズ類は、パッケージも含めてパビリオンでの「体験」の一部であり、その記憶を持ち帰り、日常へと「循環」させていくための大切なピースとなることを目指した。
Product
プロダクト
館内のプロダクトも「循環」を体現。ファクトリーエリアでは藻類とバイオプラを混合した素材でスツールを3Dプリントで制作。 接着剤等を使わず日本の木工技術を応用し、解体・再利用を容易にした循環型の設計とした。 ベンチやサイン類は建築と同じCLT製。これらも過度な加工を避け、解体・組立容易な構造で次の利用へ繋げる。 さらに、館内のあちらこちらで姿を変えながら登場する「微生物によって溶ける器」もデザインし、 持続可能性と日本のものづくりを表現した。
Uniform
ユニフォーム
着物の構造をもとに、平面的な布が身体を覆うことで生まれる「余白」を大切にする、日本的な感覚を体現。 複数のアイテムが用意され、各アテンダントはそれらを自由に組み合わせることで、自身のスタイルで着こなすことができる。 着心地、動きやすさ、暑さ対策などの機能性に加え環境負荷にも配慮。主素材には再生利用可能なものを選択した。 さらに、会期終了後にスムーズに再資源化できるよう、ボタンやファスナーを一切使用しないデザインとなっている。 足元には、日本の伝統的な履物である雪駄をモチーフにした、オリジナルのフットウェアを合わせた。

©Allan Abani
総合プロデューサー/総合デザイナー
佐藤オオキ
1977年カナダ生まれ。2000年早稲田大学理工学部建築学科首席卒業。2002年早稲田大学大学院修了後、デザインオフィスnendo設立。東京とミラノに拠点を構え、建築・プロダクトデザイン・ブランディングなど多岐に渡ってデザインを手掛け、イタリア・フランス・イギリスでのデザイナーオブザイヤーなど、世界的なデザイン賞を多数受賞。TOKYO2020の聖火台デザインを担当した他、フランス高速鉄道TGV新型車両のデザインも手がける。
Directors

©Masahiro Ohgami
建築ディレクター/展示ディレクター
新藤翼
1991年愛知県生まれ。シニアデザイナー。早稲田大学および同大学院で建築を専攻し、ベルリン工科大学建築学研究所への留学を経て、2017年にnendo入社。訪れる人の記憶に残る空間を目指し、建築とインスタレーションを体験から構想する。一級建築士。担当作品にnendo : breeze of light、Escher X nendo | Between Two Worlds、階段の家 など。

©Masahiro Ohgami
コミュニケーションディレクター
西住直子
1991年埼玉県生まれ。 シニアデザイナー。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科を卒業後、2014年にnendoに入社。グラフィックデザイナーとして、HANDSのブランディング計画や、WBS(ワールドビジネスサテライト)の番組総合デザイン計画、media luxeのプロダクトデザインなど、グラフィックからプロダクトまで、領域を横断するアプローチでデザインを行う。

©Masahiro Ohgami
展示企画ディレクター
吹野耕大
1986年神奈川県生まれ。シニアリサーチャー。東京大学大学院にて博士(工学)の学位取得後、2018年にnendo入社。 自然科学の知見をもとに展示の企画・設計に従事し、デザインを介した科学技術と社会とのつながりを模索。 担当作品にサントリー美術館 uncovered skies、TOKYO2020聖火台、junwanシリーズ、東京ミッドタウン christmas tree、TOKYO CREATIVE SALON ヤワラカサカ など。
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