enKAK

「アイリスチトセ」が生活家電や収納用品、日用雑貨など様々な製品の製造販売を行う
アイリスオーヤマグループ傘下のオフィス家具メーカーであることから、
家具だけにとどまらない、照明器具やアクセサリー類、建材まで多岐にラインナップした総合コレクションを手がけることに。

コロナ禍を経て、在宅勤務の普及や、郊外で働きながら休暇を取るワーケーションなど、働き方の多様化に合わせて、
そのまま自宅やカフェなどで使用しても違和感のないデザインを目指した。
その結果、「円」と「角」のバランスに注目。
「円」は人が触れたり、自然と集いたくなる要素であると同時に、空間に心理的な柔らかさをもたらす。
一方、「角」はモノ同士を美しく連続させ、部屋の壁に沿いやすく、空間をシャープに整える効果がある。
総計300点に及ぶひとつひとつのアイテムが、この2つの要素の組み合わせによって構成される。
様々な環境に適応しつつ、ワークスペースに求められる「集中」「リラックス」「コミュニケーション」といった機能を
自由にカスタマイズできるコレクションを企図した。

フリーアドレス用のワークデスクや折畳み式デスクは、それぞれ端部が「円」と「角」のものを用意。
「円」では簡単なミーティングができ、「角」は連続配置させたり、効率の良いレイアウトが可能になる。
ソファやブース類は、外側を「角」、内側を「円」にすることで、空間との親和性と居心地の良さを両立させると同時に、
「円」と「角」の隙間には照明も設置できるようになった。
また、デスク類やミーティングコーナーと高さや幅のモジュールを揃えることで組み合わせやすくした。
サイドテーブルやベンチ、プランターは、「円」と「角」を組み合わせた形状により、
配置の仕方によってサイズや形が変化するだけでなく、他の家具や壁際、部屋のカドにも無駄なく沿うようになっている。
このとき、サイドテーブルの天板には大きめの隙間を設けることで、照明や充電用のケーブル類を隠しやすい。
デスクにはフレームを取り付けることが可能であり、そのフレームに引っ掛けられるトレイやペン立て、時計などのアクセサリー類も用意。
フレームにはファブリックパネルも取り付けられ、吸音性を高めたり、照明器具や配線類をスッキリ隠すことができる。

照明器具は、機能性を重視した直線的な「角」タイプと、「円」と「角」を組み合わせたランプシェードタイプの2種類を用意。
どちらにも「ペンスタンド付き」「スタンダード」「クランプつき」の3種類の台座がある。
ランプシェードタイプはデスク用のほか、フロアスタンド、ペンダントの計3タイプがある。
デスク用のランプシェードは内部がオレンジに塗装され、2灯のスポットライトが取り付けられていることで、
ライトの角度を調節して「寒色系の強い直接光」を照射することも、シェード内部に向けて「暖色系の間接光」にすることもできる。
これによって、テーブルの中央から、向かい合う人それぞれに光を当てることも可能になる。
さらに、コートスタンドやカフェテーブルの台座は、ランプシェードと同じ形状を用いることで、空間の一体感を意識している。

スタッキングチェアやラウンジチェア、ワークチェアも、上部は「円」、下部は「角」と、
「円」と「角」とを組み合わせた背もたれの形状によって、
適度な緊張感とリラックス感のバランスを意識したものになった。
持ち運びやすいようにハンドルがついたスツールでは、人が触れやすいハンドル部分や座面を「円」に。
他にも、傘立てや受付台などのエントランス用アイテム、ハンガーラック、吸音パネルやパネル型スピーカーなどの会議室用アイテム、
ハイスツールやスナック・ステーショナリー用コンテナ、ゴミ箱などの休憩コーナー用アイテムなど、
広範囲にワークスペースを網羅するコレクションとなった。

コレクション名は「円(エン)」と「角(カク)」から「enKAK (エンカク)」とした。
「en」は小文字、「KAK」は大文字を使ったロゴによってそれぞれの形状の特徴を表している。
7色のメインカラーは互いに組み合わせても違和感が出にくいものとし、色味や質感にこだわった結果、
ファブリックや木目調シートはオリジナルで製作することとなった。
今後は受付カウンターやキッチンカウンター、ベンチや壁面棚などの造作家具や、
インテリアの設計監修業務なども行うことでトータルな空間作りを支援する体制も整えていく。

Client:
アイリスチトセ株式会社
Collaborator:
Sayaka Ito
Richard Bone
Tjeerd te Dorsthorst
Suheyl Onal
Jisu Yun
Moreno Vannini
Shun Naruse
Yukiko Tomotsune
Masahiro Ohgami
Maya Watanabe
Kayako Asada
Anna Wezel
Tsuyoshi Susa
Photographer:
Akihiro Yoshida
Masahiro Ohgami
graphic:
Yuumi Abe
animation:
Shimpei Mitani
Akinobu Tsuda
2022.08