MAQL

裏と表が曖昧なハンドバッグ
Client :
BAG MAKERS TOKYO
2026.1

江戸時代から代々袋物を作り続けてきた、浅草橋周辺の職人たちの有志が中心となって組成した
東日本バッグ工業組合の新ブランド「BAG MAKERS TOKYO(BMT)」。
脈々と受け継がれてきた伝統や美意識、職人たちの技術の高さを伝えていくことを目指し、
バッグとしての表現の可能性を探究した。

日本では古くから着物の裏地に意匠を入れるなど、
隠れたところにまで気を遣い、そこに品を見出してきた。
これは職人の高い技術と、見えない細部まで手を抜かない丁寧なモノづくりの表れでもある。

一方で、我々が実際に目に触れ、感じ取れる機会は少なく、
多くの人にとって実感しにくい価値にもなっている。
そこで、気づかれにくい細部まで仕上げる職人の技術を隠すことなく魅力を伝える表現として、
裏を表と同等に扱うことを目指した結果、裏と表が曖昧なハンドバッグを開発することに。

まず、バッグには革の表側の銀面(シボ)と裏側の床面(スエード)を積層した素材を用意し、
裏側のスエードだけが露出したバケツのような形状を作った。
ここからフチをめくっていくことで、バッグ本来の意匠面やハンドルが現れ、
まるで表が裏から現れるような表現を可能とした。

また、このめくってバッグを形作る操作は使い手自身の手で行うことを前提とし、
製品の裏表にまんべんなく触れながら見てもらえることで、
バッグに注ぎ込まれた技術や素材の良さをより強く感じ取れることに期待した。
めくり心地をスムーズにしながらバッグとしての魅力を保持するために、
2層の素材の間にはウレタンの芯材をはさみ、より立体的な表情になるよう、
あらかじめ型に押し当てながら成形したシートを縫製。
さらに、めくった際にふっくらとした張り感を伴った覆われ方になるよう、
縫い合わされた端部に切り込みを均等のピッチで加えた。
裁断面のコバ処理には、着色した塗料によって意匠を際立たせることが一般的だが、
あえて裏を思わせる積層された素材そのものを見せる工夫を凝らした。

スケールを小さくした小物入れも合わせてデザインし、
チャームとしてハンドバッグに取り付けることが可能。
めくることができる最小のサイズかつ仕様によって、
財布などの小物をつくる職人の精緻な技術を感じ取れるようにした。
これらのアイテムに共通した、覆われているものを現し出すことの語源である
「捲る(まくる)」から、ブランド名を「MAQL」とした。
ロゴデザインにおいても「A」の文字を反転させ、裏と表の曖昧さを強調。
バッグに施されたロゴはフチをめくることでロゴ全体が反転するため、一層の曖昧さをもたらした。

裏と表の曖昧さが連なって職人の技が結晶化したことで、バッグとして使用しても、
インテリアに置かれていても雰囲気をつくるような、ファッションと工芸の間のような表現となった。

Client :
BAG MAKERS TOKYO
2026.1
Collaborator :
Kentaro Tanaka
Shun Naruse
Svenja Diery
Rika Kikuchi
Photographer :
Masahiro Ohgami