oitec

留守時に荷物を受け取るための宅配ボックスのデザイン。

ECサイト利用者の増加により宅配便の需要が高まり、再配達業務による運送会社の人手不足が
ひとつの社会問題になっている状況に対し、現在主流となっているハード型で据え置きタイプの
宅配ボックスは、取付工事が難しいことや設置場所が限られることが原因で不足している。

簡易的な組み立て型や、ナイロン素材のバッグのようなソフト型の安価な商品も登場しているが、
取り扱い時の煩わしさやセキュリティ面の不安、美観が損なわれるなどの問題がある。
そこで、樹脂製のケースの中に取り出し可能なナイロンバッグを入れた
「バッグインケース」型の宅配ボックスをデザインした。

小さい荷物(350ml缶×24本入りの箱程度まで)は、ケース内のバッグにそのまま収納が可能。
それ以上のサイズの荷物は、中のバッグをケースの外に取り出してから収納することで、
コンパクトながらも高い収納力が実現。中のバッグは、極端に大きい一部のものを除いて、
主要な宅配業者やECサイトのダンボールのほぼ全てを受け入れることができる。

ケース内のバッグの口は大きめに設計し、配達員の手がふさがっているなどの状況でも荷物が
出し入れしやすいように配慮した。同時に、バッグの底面の色だけ変えることで、瞬時に底面が
判別できるようになった。これにより、バッグの口を開ける、バッグの底面に荷物を置く、
ファスナーを閉める、施錠する、という一連の流れが スムーズになった。

バッグの外側には、荷物の収納後に施錠をするための南京錠や伝票押印用の印鑑が入れられるよう、
可視性の高いクリアポケットを設置。使用後のバッグをケースにしまう際は、綺麗に畳まずにガサッと
詰め込んでもさまになる。今後はニーズに応じて、中に入った荷物が一目で確認できるメッシュ状のバッグや、
防刃性と防水性に特化したナイロンを使ったバッグなどを開発予定。セキュリティ面においては、
ケースとバッグをセキュリティケーブルでつなぎ、格子や柵、ポールなどに固定できるようすることで、
防犯・盗難対策とした。玄関先に格子や柵などがない場合は、セキュリティケーブルの先端に「いかり」のような
役割を果たすキューブを取り付けることで、ドアの隙間やドアに埋め込まれたポストの投函口にも固定できる。
ケース背面のケーブルを通すための穴は、ケース自体を持ち運ぶときの持ち手にもなる。

ケースのカラーバリエーションは、白、黒、シルバー、ブルーの4色。配達員に向けた使用説明書は簡単に
着脱ができるよう、ケースにひっかける仕様にし、裏面を全面無地の ホワイドボードにすることで配達員や
近隣住民への書き置きも可能に。このように、取り付け場所の景観を考え、どこに置いても違和感のない
コンパクトかつシンプルな佇まいを目指した結果、ハードとソフトの双方の長所が合わさったような
宅配ボックスが生まれた。「置いてく」ことと、電子取引の「EC」を掛け合わせ、「oitec」と名付けた。

Client:
杉田エース
Collaborator:
Yuichiro Kawabata
Arata Nishikawa
Photographer:
Akihiro Yoshida
2017.12