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近年変化しつつある死生観や供養観に呼応した仏具のデザイン。
少子高齢化や経済的理由で、継承を前提としたお墓の建立や維持管理が困難な家庭が増加している。また、日本人の死生観の多様化に伴い、従来の寺院への納骨や伝統的な仏壇へのこだわりも弱まりつつある。代わりに、インテリア性の高い器や手軽に身につけられるアクセサリーといった、「手元供養」と呼ばれる手法が注目されており、これは遺灰を日々の生活の一部に取り入れることで喪失感や孤独感を克服するといった精神的価値を重視した考え方である。また、遺骨を粉骨(粉末状に)した後、海に「散骨」したり、木の根元に埋葬する「樹木葬」など、故人を自然に還す自由な考え方も普及しつつある。

こうした背景をもとにデザインされた「骨壷、香炉、花立、お琳」の4点からなる仏具セットは、供養台の上に並べて使うのではなく、供養台を「大地」に見立て、それぞれの役割を柔らかく一体化させたものとした。小高い「丘」の中には骨壷が納められ、窪みに水を張ることで「湖」のような花立に。お線香は立てても寝かせても使うことができ、小さな凹みが灰を受け止める香炉の役目を果たす。そして、お琳も地面の起伏の一部となっており、指で触れることで内部の鈴が鳴るようになっている。さらに、少量の粉骨を入れて身につけるペンダントも合わせてデザイン。ペンダントホルダーは骨壷と同じ「丘」の形をしており、その一部を切り取られたようなペンダントとなっている。こうすることで、故人が眠る大地の一部を身に付けているような感覚が生まれれば、と考えた。

このように、手元供養の魅力と、散骨や樹木葬によって自然と一体化するイメージをどちらも感じられるような、おおらかなデザインとなることを願った。

Client:
イニシエ
Collaborator:
Arata Nishikawa
Richard Bone
Photographer:
Tsunehiko Okazaki
:
2021.06