ポケモンカードゲーム Classic

『ポケモンカードゲーム』は1996年の発売以来、
世界中のファンに愛され続けている対戦型トレーディングカードゲーム。
各国共通のルールのもとデザインされたカードの他に、
プレイ時には「プレイマット」や「ダメージカウンター(通称ダメカン)」といった周辺アイテムが必要となるが、
これらはプレイヤーごとや国・地域によって多種多様なスタイルが存在していた。
例えば、日本国内では「おはじき」型のオフィシャルなダメカンが多く使われるのに対して、
北米では一般的に市販されている「ダイス」で代用しているなど、地域ごとに比較的自由に使用されている状況がある。
しかし、プレイヤー人口の増加や世界大会の開催などに伴い、国際的な指標となるプレイ環境の必要性が増してきた。
『ポケモンカードゲーム』開発者で、株式会社クリーチャーズ、株式会社ポケモンの代表である石原恒和氏によれば、こうしたプレイ環境の整備は、
チェスやバックギャモンに見られるような、グローバルでスタンダードな形式となる設計の商品を目指す第一歩を意味している。

上記の目的から、『ポケモンカードゲーム』史上初となるグローバルスタンダードのプレイ用キットを
『ポケモンカードゲーム』を開発する株式会社クリーチャーズと、
商品やサービスのプロデュースを行う株式会社ポケモンと共に開発することになった。
キットには、「くさ」「ほのお」「みず」の3種類のタイプ(属性)のデッキ(60枚のカード)があらかじめセットされており、
あわせてカードを保護する「デッキシールド」もそれぞれ用意。カードのデザインが引き立つようにモノトーンを採用した。

「ダメカン」は円錐形状にして複数個を重ねて使えるデザインにすることで、数字が垂直方向に並んで計算しやすくなるほか、
カード面を覆う面積が減って券面の情報が見やすくなる。さらに、綺麗に収納しやすいというメリットも生まれた。
「10」「50」「100」という3種類のダメージ値は、数字が大きくなるにしたがって「背」を高くすることで、より直感的に認識できるように。
重ねやすさ、外しやすさに加え、倒れにくさを考慮し、適度な重みのあるアルミで製作した。
「どく」「やけど」のステータスを表す「マーカー」も、カード券面を隠しにくいリング型に。

これらは全てツールボックスへ綺麗に収納されるが、このボックス中央に「コイントス」用のエリアを用意。
小さな子供などにとってはコイントスが上手にできなかったり、大人でも盤面から飛び出してしまったりすることがある。
こうした状況の改善を考えて、当初は飛び出しを防ぐ「ダイス用のトレー」を用意する方向で進行していたが、
石原氏との対話の中で、オモテ・ウラが決定するまでの時間をよりワクワクする体験にするための改善案として、
「ルーレット」のように球を転がして決める仕様にアップデート。
この変更によってプレイ中誰でも同じようにコイントス判定ができるようになるだけでなく、
決定までの適度な時間経過を対戦者同士で見守り、楽しむような、新しいコミュニケーション要素が加わった。

これらを全て収納するケースは、広げるとゲームの「プレイマット(盤面)」も兼ねている。
表面のファブリックはカードの滑りやすさに配慮し、
ケースとして持ち運ぶ時にエッジを保護しながらもプレイ時にカードが引っかからないよう、フチはステッチのないトメ加工とした。
さらにケース時にヒンジが露出せず、プレイ時は盤面中央に隙間が生まれないよう、ヒンジは布製に。
また、ケースのフタを閉じるための留め具もなくし、マグネットを内蔵させることでプレイ時のノイズとなることを回避した。

盤面のグラフィック要素はツールボックスやデッキシールドに合わせて黒と白に。
それによりカードやツール類の視認性を高めることを狙っている。
白い線はカードの「バトル場」や「ベンチ」の位置を示しつつ、ポケモンを待機させる「サイド」の位置は波線で示すなど、表現を最小限に
留めることでよりスタンダードなデザインとなることを目指した。

Client:
株式会社ポケモン+株式会社クリーチャーズ
Collaborator:
Sayaka Ito
Madoka Takeuchi
Jisu Yun
Shiori Iriyama
Photographer:
Hiroshi Iwasaki(1,2,5-21,23-41)
Masahiro Ohgami(3,4,22)
2023.02