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住空間を構成するさまざまな建築金物や水栓金物は、それぞれ機能や役割が異なるため、
おのずと形状や仕上げもバラバラになり、この集積が、結果的に空間のノイズとなってしまう。
そこで、統一されたデザインのコレクションを開発することに。

まずは円柱の一部を削ぎ落とし、一部が「面」になっている造形をコレクションの基本形体とした。
断面が円形のものは握った際には手に優しいが、滑りやすいというデメリットがある。
また、複数を隣接させて並べると隙間もできてしまう。
解決策として一部を平面にしたことで、
指や物が引っかかりやすくなり、複数がぴたりと並ぶようになった。
さらに、この面が水平・垂直のラインを強調するため、同じく水平の床と垂直の壁で構成される居室において、
空間のノイズとならずに調和すると考えた。

基本形体を横方向に引き伸ばした「バー」は、そのままドアハンドルやタオルハンガーになるほか、
バーと壁の間に棚板を固定するとシェルフにもなる。
バーの断面形状によって円柱の場合と異なり、
オリジナルのトレイやフック、コンテナ、ミラー、カップ、ソープディスペンサーなどのアクセサリー類を
上から引っ掛けるだけで簡単に、確実に取り付けられる。
これらのアイテムは、洗面所や浴室のみならず、クローゼットや玄関周り、トイレやキッチンなど、
家の中のさまざまなシーンで使われることを想定している。

併せてデザインしたダストボックスはフタが2点だけで支持され、前後のバランスをとった状態で乗っているため、
フタの先端を軽くもち上げると自重で開いていき、少し触れるだけで自然と閉じる機構に。
そして、洗面ボウルやミラーもアクセサリーと同様に、バーの上に引っかかっているようなデザインにした。
高透明シリコンでできているカップは、「面」があることで、
カップホルダーへの設置やスタッキングが容易に。
ガラスのような透明感でありながら、触れるとゴムのようにやわらかく、誤って床に落としても割れない。
ソープディスペンサーも基本形体を踏襲。横に複数を並べた際、隙間なくぴたりと整う。
このように、棚の上に乱雑に置かれがちなアクセサリー類が自然と整理される特長も備えた。

蛇口は、通常タイプと壁付けタイプを用意。
壁付けタイプの蛇口と2つのハンドルが独立しているものは、
切断面が揃うことによって、3つの要素が視覚的に繋がれる。
壁付けタイプの蛇口とハンドルが一体化しているものは、
ハンドルがバーの一部が浮遊しているようなディテールになっており、バーに隣接させると一体的に見える。

さらに、レバーハンドルや回転式ドアロック、ドアノブ、
ドアストッパー、トイレットペーパーホルダーなども同様の造形ルールに従ってデザイン。
回転式ロックは、鍵がかかっていることを示す赤色が、回転させると自然と現れるようになっている。

住空間における脇役的な存在でありながら、それぞれが共通の削ぎ落とされた「面」をもつことによって、
空間全体を整えてくれるコレクションとなった。

Client:
SANEI
Collaborator:
Shinichiro Umehana
Hirotaka Tanaka
Photographer:
Takao Nagase
Kaori Uemura
movie editing:
Shimpei Mitani
2022.08