ViXion

視覚障害者にとって社会生活における障壁は、例えば、ホームからの転落や路上での交通事故のほか、
就学・就労にまつわる不利益などがあり、大きな社会課題となっている。
そうした問題の解消につながる福祉機器の開発と製造販売を行う「ViXion(ヴィクシオン)」は、
光学機器やガラスを製造するHOYAから2021年に独立したスタートアップ企業。
同社のコーポレートブランディングと製品デザインを担当した。

企業名は「Vision (=視覚)」の中心にある「s」を、人の可能性を引き出すことを示す「X」に置き換えたもの。
ロゴは一本のラインと、その先に少し離れた小さなラインを配することで、
視覚障害者が社会や未来に向け、勇気を携えて「新たな一歩を踏み出す」イメージを表現。
メインカラーの白とダークブルーはコントラストが強くなりすぎない色を選定し、見やすさと目への優しさを考慮した。

完全に視力がない全盲者と異なり、
見えにくいという症状を抱えて生活する「弱視者」は全国で約145万人いると言われる。
こうした弱視者の中でも、暗い場所での視力が著しく低下する「夜盲症」と、
極端に視野が狭い「視野狭窄」という2つの症状に対応したウェアラブルデバイスをデザイン。

フレーム中央に配置したカメラレンズがキャプチャした映像を、
夜盲症の症状があっても見えやすい高輝度かつ高コントラストな状態に高速処理。
これを眼前にあるハーフミラーのディスプレイ上に投影する機構となっている。
また目の症状に合わせて、白黒や白黒反転、ハイコントラストな色調に切り替えが可能。
全体を一定以上の明るさにするモードと、
映画館のスクリーンや水族館の水槽など部分的に見やすい明るさに自動補正するモードを搭載する。
これらのカメラ映像はBluetoothを介してスマートフォンへ転送することも可能なため、
リモート環境から順路をナビゲーションしたり、読みにくい標識などのサポート、子供の見守りなどができる。

カメラ以外はフロントカバーで覆われており、外の気配が感じられるシースルーのため歩行しやすく、
また、遮光性があることでディスプレイが見えやすいメリットもある。
カメラレンズは広角レンズに取り替えられ、視野が広がることで視野狭窄があっても
歩行中に人や物にぶつかりにくくなる。
さらに、視力矯正が必要な際は、オプションで内側に度付きレンズを取り付けられるようになっている。
テンプル(つる)にはフィット感の良さと、万が一の衝突時にも破片による怪我が発生しにくいナイロン樹脂素材を使用。
側面にViXionロゴのラインをアクセントとしてあしらったほか、
右側テンプルの底にはラインが突起状に配置されていて、天地左右が指先の触覚で認識できる。

Client:
ViXion
Collaborator:
Mayuka Henmi
Yuto Suzuki
Shinichiro Umehana
Photographer:
Tsunehiko Okazaki
2021.08