階段の家

東京の閑静な住宅地に建つ二世帯住宅。敷地の周囲に住宅やアパートなどが建て込んでいることから、
建築のボリュームを敷地の北側にぐっと寄せて南側に庭を確保し、南面をできるかぎり大きく開くことで
採光や通風、そして庭の緑を積極的に生活空間に取り込むことにした。
そして、こうした配置計画によって先代から愛されてきた既存の柿の木を残すことが可能となった。

階段の上り下りの負担に配慮した結果、高齢の両親の住まいは1階に配置。
そして夫婦と子供の三人家族は2〜3階で暮らすことに。これによって、両親と一緒に暮らす8匹の猫たちが
内と外を自由に出入りしやすくなり、母の趣味である庭の植栽の手入れと鑑賞が手軽に楽しめるようになった。
このとき、二世帯が上下に完全分離をされてしまうことが懸念されたため、南側の庭を一部「階段状」にし、
1階から3階までを貫くように建築内部に引き込むことに。「階段」の内側には水回りや上下移動用の
階段といった機能的要素がコンパクトに収められ、上部は緑の豊かな温室のような半屋外スペースとなり、
高い場所に登るのが大好きな猫たちにとっても格好な日向ぼっこの場所となる。
そして、この階段と緑によって上下階が斜め方向に緩やかに繋がるようになり、
三世代の家族みんながお互いの気配をそれとなく感じながら過ごせる空間が生まれた。

この階段は「内部と庭」そして「家族同士」を繋ぐのにとどまらず、地上では南側の私道と接続しながら
外へ伸びていき、上部はトップライトを経由して空へと吸い込まれていくことで、
周囲や街とも緩やかに繋がっていくような、そんな、広がりのある建築となることを意識した。

Places:
東京都
個人住宅
Collaborator:
Noritaka Ishibayashi
Tsubasa Shindo
Hiro Shoji
YSLA
SOLSO
Mizusawa Komuten
Photographer:
Daici Ano(1-13,16-21,23,24,26-33)
Takumi Ota(14,15,22,25,34-55)
2020.03